質問:仕事からの帰り道で現金$50札を拾いました。周りには誰も落としたような人はいなかったので、あらラッキーだわ、と自分の財布に入れて持ち帰りました。しかし現地の友人から、オーストラリアではこのような場合窃盗の罪になることもある、と後で聞き大変驚いています。本当でしょうか。(40代 女性:シドニー)

回答: 現金に限らず、財布や宝石、携帯電話などの貴重品を道路やお店などで拾う話はよく聞きます。ご指摘の通り、オーストラリアでは状況によりますが、発見した人が「Stealing by Finding」(発見による窃盗)の罪に問われることがあります。もし窃盗罪とみなされると、例えば「Larceny」(窃盗)はNSW州では最高5年の刑(Crimes Act 1900 (NSW) s117)が、VIC州では最高10年の刑(Crimes Act 1958 (VIC) s74)が言いわたされる可能性がありますので、貴重品を拾った時は慎重な対応が必要となります。

ここで気を付けなければならないことは、発見者が貴重品を見つけた時に「持ち主を見つけるためのステップを誠実に踏んだか」という点です。そのステップはもちろん状況によって異なりますが、例えば警察に届けを出すことであったり、貴重品を拾ったお店の人にその旨を報告したり、もし持ち主の詳細が分かれば持ち主にコンタクトを取るといったことを指します。こうした手順を踏むことで、警察に尋問された時に、「私は持ち主を見つけるためにこういった行動を取った」という証拠になり、罪に問われる可能性が低くなります。

加えて、いつこのステップを踏んだのかというタイミングも重要です。「自分の物にするつもりはなかった。後で返すつもりだったがとりあえず持っていた」という弁解があったとしても、すぐに警察に届けを出す行動に移したという証拠がなければ、警察や裁判所に窃盗目的ではなかったと納得させることは難しいでしょう。

これは実際に2010年にメルボルンであったケースですが、あるカップルが「Salvation Army」のチャリティー・ショップで中古品のスーツケースを買い、その中に10万ドルの現金を発見した事件がありました。このカップルはその現金を見つけたことを、スーツケースを購入した店や警察に届け出ることをせずに、こっそりと自分たちの銀行口座にお金を何度かに分けて入金しました。しかし、持ち主が現金を入れたままスーツケースを寄付してしまったことに気付き、その店に連絡を取りました。それを受けてビクトリア警察は「CCTV」や「Eftpos」の購買記録からこのカップルを探し出しました。もしこのカップルが現金を見つけた後、直ちにお店や警察に届けを出していたならば、持ち主がある一定の期間見つからなかった場合適用される「Finders Keepers」(拾った人に所有権が移る)の原則が当てはまることになったかもしれません。しかしそれを怠ったこのカップルは、持ち主を探す努力をしなかったとして、後に窃盗罪の罪に問われることとなりました。

上述のケースからも分かるように、貴重品を拾った時は各州の刑法に違反するかもしれないことを常に念頭に置き、まずは持ち主を探すという行動を心掛けるべきでしょう。また、もし窃盗として刑法に違反したと見なされた場合は、その犯罪歴はご自身の将来のビザ申請や海外渡航、就職の際に影響をもたらすことがあるので、注意深い対応が必要です。

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。