質問:オーストラリア人の夫と離婚を考えています。子供は9ヶ月の子が一人います。来月夫承諾の上日本に1ヶ月帰国します。その際にそのまま日本で1年間暮らし『別居』したとしたら離婚は可能ですか?それとも子供を誘拐したとみなされ、強制的にオーストラリアに戻されますか?(34歳女性主婦)



回答:確かに現行の家族法では離婚申請を行う上で12ヶ月間の別居は条件の一つとされています。これは「婚姻関係が破綻し修復不可能な状態」(“irretrievable breakdown of marriage”)であることを当事者が証明するための唯一の規定条件です。両当事者が同じ家に住みながらも互いの当事者から完全に独立した生活を営んでおり双方共に『家庭内別居』をしていると認識している状態は別居としてみなされますが、別居は基本的に、継続的(注:断続的なものが認められる場合もある)、かつ真正なものである必要があります。たとえば、いずれかの当事者による単独離婚申請で、申告されている別居期間に偽りがあると他方当事者から申し出があったり、又、別居の事実に対する当事者間の認識にずれがあると考えられたりする場合、その離婚申請は却下の対象となりえます。

質問者の場合、夫はあくまでも1ヶ月間の「旅行」として妻が子供を連れて日本に行くことに承諾したまでであり、「別居」のために妻が家を出ることに承諾したわけではありません。この状態のままで12ヶ月間妻が日本にいたとしても上述のとおり「別居の事実に対する当事者間の認識にずれがある」ことになり、後の離婚申請に際して必要な条件を満たすことにはなりません。

さらに、子供を国外に連れ出すことは子供の親に会う権利を剥奪する行為としてみなされるため、約束の1ヶ月を過ぎても子供をオーストラリアにつれて帰らない場合には夫が子供を強制的にオーストラリアに連れ戻すための手続きを行うことはありえます。日本はハーグ国際協定の加盟国となったため、子供を奪取されたとして夫がオーストラリアで返還命令を得た場合、その命令に従った対応を日本側が行うことは大いに考えられます。ただし、実際に子供が返還されるか否かについては様々な理論が存在しケースバイケースであるため、この紙面でコメントすることはできません。

しかしながら、もし今回約束の期間内に子供をオーストラリアに連れ帰らなかった場合、そうした事実は将来におけるparenting orders(居住や子供と過ごす時間など、子供の養育に関する裁判所の命令)などの家庭裁判所での手続きにおいて質問者は非常に不利な立場に立たされることになるでしょう。又、次に子供を国外に連れ出すことが非常に困難になることも大いに考えられます。

上述をご質問に対するひとまずの回答としますが、離婚に際しては子供の養育、財産分与、そして養育費の問題などが関与してくるのは必至です。加えて日本人同士の結婚でない場合には国外に子供を連れ出すことに関する問題はどうしても起こりがちです。日本における家族法関連分野における我々の認識とずれがある場合もありますので、当地の家族法の認識を高める意味で、行動を起こす前に専門家の説明を求めることを強くお勧めします。





なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。