質問:遺言書は過去に作成しているのですが、最近ある方から遺言書のほかにもPower of Attorneyを作成しておいたほうが良いと言われました。私は妻に先立たれ、一人娘が結婚してシドニーに住んでおり、遺言書では娘にすべての財産が遺贈されるようにしています。このような私でもPower of Attorneyを作成しておく利点がありますか? (無職 シドニー在住:78歳)


回答:Power of Attorneyとは自身の財産管理を第三者に委任するための法的文書です。委任を受けた者(Attorney)は委任する者(Principal)の銀行口座、有価証券、不動産などあらゆる財産に関する取引を代理で行う権限を与えられます。

Power of AttorneyにはGeneral Power of AttorneyとEnduring Power of Attorneyと呼ばれる二種類のものが存在します。前者は、Principalが不能状態(判断知能を喪失すること)に陥った時点で効力が失われる性質をもつことが特徴で、Principalが海外渡航などで一時的に不在にしている間などの際に短期目的で作成され、そしてしばしば管理する財産も限定的に記載されます。

これに対して後者のEnduring Power of Attorneyは、Principalが不能状態に陥った後も効力が継続します。この文書は、入院や障害などの身体的な理由などで自身の財産管理が困難である場合などに利用されたりしますが、そうした身体上の不具合がない状態であっても、不慮の事故によるけがや病気、また加齢に伴い可能性が高くなる知能障害などに備えて作成される場合が多々あります。

ご質問者はこうした「不測の出来事」に対しての助言を受けられたものと推測します。遺言書はご自身の没後にのみ効力を発揮する文書です。ご存命中にこうした「不測の出来事」が起こってしまい、高額治療費などにご自身の財産からの支払いが必要とされる場合であっても、もしその時ご自身の判断能力が失われてしまっていれば、財産の処理ができないことになってしまいます。たとえ遺言書の唯一の受益人であるお嬢様であっても、お父様名義の不動産を処理する契約書に代理署名することは不可能です。銀行口座もお父様との共同名義でない限り金銭引出は認められないでしょう。

つまり、Enduring Power of Attorneyがお嬢様に作成されていれば、万が一こうした不測の出来事が発生した場合でもお嬢様がすべて対応できるということです。

また、Enduring Power of Attorneyと同時にぜひ備えておきたい文書で、Enduring Guardianshipと呼ばれる文書があります。Power of Attorneyは財産管理の委任をするためだけの書類であり、自身がどのような治療や投薬を受けるか、またはどこの(医療)施設に入所するかなどに関する判断をAttorneyに委ねることはできません。Enduring Guardianshipはこうした健康や生活面に関する判断を委任する際に作成されるもので、Power of Attorneyと別に作成される必要がありますので、同時に検討されるとよいでしょう。

 

なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。