コロナウイルスが及ぼす影響

 
コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となり、豪州では対策厳格化政策の一環として、3月23日からパブ、クラブ、映画館、ビーチ、ジムなどのサービスが全国的に営業停止となり、さらにそれ以降も日々刻々と新たな規制が導入され続けています。3月に入ってから多くの企業やビジネスが自宅勤務を励行し始め、さらにここにきて政府による自宅隔離勧告がより強化されたため、顧客を失った多くの小売店は売り上げが激減し、営業停止対象となっていない小売店の多くも自発的に店を閉めることを余儀なくされている状態です。もはやウイルス罹患者だけでなく、国民が一人残らず何らかの被害を受けていると言っても過言ではない状況となってきました。

こうした中、スタンドダウン(一時解雇)された場合、雇用主を相手に法的に訴えることはできるのでしょうか。まず、カジュアル勤務の従業員については、仕事を継続的に与える義務はありません。従ってカジュアル勤務であった場合、ある日いきなり仕事が与えられなくなったとしても雇用主に対して補償等を要求することはできません。では、フルタイムやパートタイムの従業員の場合はどうでしょうか。当地の労働法上、通常の場合は、一定の通知期間なくして解雇することは不当解雇とされ、また多くの場合、余剰人員を解雇する際には規定に従って賠償を支払うことが求められます。ただし、関連法令の規定では、雇用主が妥当にコントロールできない理由で業務がなくなり、そのため従業員を有効に活用することができなくなった場合にはその従業員を一時解雇することが認められています。今回のように人命優先の見地から人々が避難させられたために売り上げが激減した場合、あるいは雇用主の非がないにもかかわらず政府から営業停止を命じられた場合には、雇用主が従業員との契約条項を遵守することが不可能となるため、この特例対象に該当することになります。また、この規定が該当する場合には雇用主が賃金を支払う必要はないとも謳われています。「有効活用」の解釈やその対象となる人がどのように選ばれるべきかについてはそれぞれの状況に応じて判断が分かれることになりますが、今回のようにあまりにたくさんのケースが一度に起こり、また雇用主も多大な被害を被っていることが容易に予想される場合、従来のように雇用主が強者、従業員が弱者とした常識的図式が当てはまらないことが大いに考えられます。従って、たとえ、自分が不平等な扱いを受けたと思われる場合でも従来のような救済は容易に望めないことと思います。

 今のところいつになるかは誰にもわかりませんが、その内規制も緩和され、現在閉じられている店や企業も業務を再開する日がいずれ訪れます。では、今回一時解雇扱いになった従業員の復職は確約されるでしょうか。ビジネスは生きているものです。それまで何年、あるいは何十年もかけて築き上げられたビジネスの全てが再開と同時にすぐに同じ状態に戻れるとは限りません。ビジネスの性質や形態を変えての再開となるかもしれません。そうした場合、たとえビジネスが再開したとしても、復職の機会が与えられないことが大いにあり得ると思います。こうした際にもまた誰が復職でき、誰ができない、とした不平等の問題が発生することになるでしょう。雇用主が休業している間に失った利益を取り戻すことは容易なことではありません。また、休業中法的に人件費をカットすることができたとしても、その他の大きな固定費(賃料など)から免除される法律規定はありません。本日現在、この賃料の問題をどう対処するかについて政府レベルで議論されていますが、多角的な検討が求められるため、ビジネス経営者だけが優先・優遇されることはないことと思います。そうなれば、今回の休業がもとで倒産してしまうビジネスも多く出てくることになるでしょう。そうした場合、復職どころか現在未精算の有給休暇などがあった場合にもそれらが補償されないとした問題なども多く発生することと思います。

 現在の問題が収束した後、高失業率になることは誰もが予想しており、その率は2桁台になるとも予想されています。ある識者の見立てでは、失業率がこれまでの水準に戻るには少なくとも3年はかかるとしてもいます。今後失業率を下げるための様々な政策が打ち出されていくことと思いますが、それらはすべて市民権・永住権保持者の雇用を促進するための政策となることは必至です。このことはつまり、短期滞在ビザカテゴリーの規定、特に労働に関する規定が今後より厳しくなっていくということでもあるのです。

 繰り返しになりますが、今回の問題ではほとんどの人が何らかの被害を受けているため、現実的な救済策も限られてくることと予想しています。今後自分の身に起こりえることはそれぞれの立場によって大きく異なると思います。被害が少しでも小さくなるよう今の時点から可能な準備を進めることが重要なことと思います。そうした準備とは専門家のアドバイスも含めた正しい情報の収集から始まることだと思います。

 ※本記事は、法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。